
皆さま、こんにちは。ボーイング787副操縦士の村瀨です。
本日も旅コラムをご覧いただきありがとうございます。
皆さまはパイロットの仕事というと何を想像されるでしょうか?
離陸・着陸などの飛行機の操縦、コックピットのスイッチ操作...。こういったものを思い浮かべた方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は皆さまのお目にかかる機会のほとんどない飛行中の仕事についてお話ししたいと思います。
今現在、私の乗務するボーイング787は、北米路線、ヨーロッパ路線、東南アジア路線など主に国際線を担当しています。
比較的長めの国際線が多く、飛行時間の大半を占めるのは上昇・降下を除いた巡航飛行です。
家族や友人から「巡航中にパイロットは何をしているの?」と質問されることがあります。
もちろんボーッと座っているわけではありません。
機械に唯一任せられる操縦を自動操縦に切り替えて、計器類のモニター、管制機関との通信、飛行時間や燃料消費量の計算、客室乗務員や地上との連絡などを行なっています。
そして、皆さまに機内で安全・快適にお過ごしいただくための最も重要な仕事の一つが"揺れの回避"です。
ジェット気流や梅雨前線などを横切るときの風向・風速、温度の変化。
大きな積乱雲中とその近傍の上昇・下降流。
飛行機に揺れが生じやすいのは、このような大気の性質が変化するところを通る際です。
当然ですがその変化を人間の目で捉えることや、大気の状態を完全に把握することはできません。
そのため、計器類で確認できるデータと飛行前に確認した天気図や悪天予想図、他機や地上からの情報などを参考に揺れが発生するエリアを"予測"し回避を行なっているのです。
(画像1&2)予想天気図の一部。航路の平面図と断面図。
ジェット気流による強い揺れが予想されているエリアに対し、上昇して回避するのか降下して回避するのか、積乱雲を右に避けるのか左に避けるのか...。コックピットのなかで機長と副操縦士はそんな作戦会議を行なっています。
しかし、残念ながらどんなにパイロットが綿密に作戦を立てていても揺れを回避しきれないことがあります。
空域や管制上の制限で左右に変針できない、他機の航路と重なってしまうために上昇・降下できない...。
そして何より、予測できない揺れ。
揺れを回避しきれず離席中の安全が担保できないと判断したときに、機長がシートベルト着用サインを点灯させるのです。ご自身の安全のために、ご搭乗中にシートベルト着用サインが点灯した場合、また予期せぬ揺れに備えお座席にお着きの際にはシートベルトの着用をお願いいたします。
飛行機の窓からモクモクとした大きな雲が見えたら、しばらく続いていたカタカタとした揺れがおさまったら...。もしかしたらお乗りいただいている飛行機のパイロットが、揺れを回避する作戦に成功したのかもしれません。
そんなことをご想像いただくのも旅の楽しみの一つとしていただければ幸いです。
それでは、皆さまと空の旅をご一緒できる日を楽しみにしております!
※旅コラムは、2018年12月6日時点の内容です。