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2018年11月14日 (水)

丸い地球、地図と磁石の話

ボーイング777機長 大村

Category:  スタッフ   パイロット

皆さま、こんにちは。ボーイング777機長の大村です。
今回は、幼い頃から地図が好きだった私が、地図と磁石についてお話しします。

航空で使う地図では方位の正確さが大事
ここで問題です。東京から真東の場所はどこでしょうか? アメリカですか?
地球儀があれば、東京の場所に紐またはテープの端を置き、東の方向に伸ばしていくと、東京から見た真東には北米ではなく南米のチリやアルゼンチンがあることがわかります。
地球表面のある地点から各地点への方位・距離を正しく描いた下記の「正距方位図法」の地図でもそのことが確認できます。

(NHK for School 電子教材より)

地図の持つ方位誤差は狭い範囲で使用するときには支障がなくても、高速で長距離を移動する航空機ではその影響は無視できません。そのため航空機の運航では方位の正しい地図を使うことが重要です。ただし中心点以外の方位情報は不正確という特徴がある「正距方位図法」の地図ではなく、各地点での方位情報が正しい「ランベルト正角円錐図法」で描かれた地図が飛行機の運航で主に使われています。

地図上の北(真北)と磁石が指す北(磁北)は一致しない
地図上の北はその地点から見た地球の自転軸の方向、つまり北極点の方向(真北)です。
しかし地球の磁場は複雑に分布しているため、磁力の収れんする極の中心は北極点から外れています。そのため磁石が指す北(磁北)は地図上の北(真北)に一致するとは限りません。
長い期間でこの偏りの角度は変化することがわかっていますが、現在磁石の針は真北に対して東京では西に約7°、アメリカのロサンゼルスでは東に約12°偏った指示をするという観測データが公表されて地図を使用する上で利用されています。(2015年の等偏角線データより)
地球上の場所によって磁石の示す北が北極点の方向から西に偏ったり東に偏ったり反対の方向に偏ること。これも地球の丸さが要因のひとつです。
余談になりますが、かつて地球の磁極が南北で逆の時期があったことが確認されており、磁場逆転の地層が千葉県の市原市で発見され、近年「チバニアン(千葉時代)」として話題になっています。

(磁北と真北の偏差:国土地理院パンフレットより)

現在の旅客機の操縦室にも装備されている磁気コンパス
変則的な地球磁場の影響を受け、緯度の高い地域では指示値の偏りが大きい磁気コンパスですが、そのシンプルな機能と構造ゆえの信頼性の高さから、航空機では重要な計器として、操縦室内のパイロットが視認しやすい場所への装備が義務づけられています。
現在では無線施設や衛星からの信号を使うなど航法装置が進歩したため、通常の運航でパイロットが使用することはほとんどありませんが、777でも操縦室正面の真ん中に磁気コンパスが取付けられています。

(777の操縦室にある磁気コンパス)

地球の丸さを体験する
パイロットが1万メートル上空から見ると水平線のカーブがわかるなどと言われることがありますが、広く海が見渡せる海岸や富士山のような山から見る水平線(地平線)の見え方とそれほど違いはないのでは?というのが私の印象です。
皆さんが地球の丸さを実感できるスポットとしておすすめなのが、茨城県つくば市の国土地理院に併設された「地図と測量の科学館」の日本列島球体模型です。
この模型は高さ約2m・半径約11mの大きさで、表面のセラミックプレートに20万分の1地勢図が焼き付けられています。この上に立って見下ろすと(1.5mの目線との縮尺比から)高度約300㎞の人工衛星から見た地表に相当します。
また航空機が通常飛行する約1万メートルの高度は5cmに相当しますので、模型表面に顔を近づけると地球に対してどのような高さを航空機が飛んでいるかをイメージすることもできます。

(地図と測量の科学館と地球ひろばの日本列島球体模型)

江戸時代に全国を測量し日本地図をつくった伊能忠敬の没後200年にあたる2018年の今年、「地図と測量の科学館」を訪れて、地図や測量の歴史や技術に触れて見るのはいかがでしょうか。

※旅コラムは、2018年11月14日時点の内容です。

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