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2018年2月 6日 (火)

春の気配を感じた日

ボーイング787機長 山本

Category:  パイロット

皆さま、こんにちは。
ボーイング787機長の山本です。
立春は過ぎたものの、地上ではまだまだ寒さを感じる季節ですね。この季節は上層では非常に強いジェット気流が通過しています。
ちょうど1年前のこの時期に、春の気配を感じる現象にフライト中遭遇しました。とあるフライトでの一コマです。

一月末。今日はヘルシンキ便。
前日のテレビの天気予報では四月並みの暖かな日になるとのこと。
朝、家を出るときも空気が暖かい。日々の温度変化が大きい時は大気の動きも激しい時。上昇中は揺れに気をつけなければと思いながら空港へ向かうバスから空を眺めていた。
今回は成田出発担当。滑走路は南風運用。予報ではこれから強い横風に変わり、その後北風に回って収まってくる。出発時間は丁度その過渡期だ。コックピットで出発準備をしていると駐機中の機体がグラグラ揺れてきた。データを見ると横風成分が離着陸禁止となるレベルまで強まっていた。

高い気温、強い南風。

まるで春一番。

定義上は立春から春分までに記録する最初の暖かく強い南風だが、今は立春直前ということで春マイナス一番か。慌てん坊の春がフライングしてしまったようだ。
出発便が重なる時間帯にこうなると、航空機が滞留するので間違いなく出発は遅れる。焦らず安全上の手順をレビューしながら進めることにする。変動を予想して追い風の中での離陸性能。風向きや風速の急な変化(ウィンドシアー)に遭遇した場合の対処。風の急変によっての滑走路変更。伴って、地上誘導路の変更とコンピュータのセットアップデータの更新。出発制限による遅れのアナウンス準備。
発生しうるすべての事象に対する最初の一手を用意して、あとは流れに任せ、可能性の高い事象への二手目、三手目を準備する。
そうこうするうちにすべてのお客さまがご搭乗され、ドアが閉まった。まだ定刻には5分ほどある。
管制塔に出発準備完了の連絡をすると、動き出すまで30分はかかるとのこと。横風成分は制限内に収まってきたものの、それまで離陸できなかった航空機が誘導路にたくさん滞留しているようだ。
すぐにお客さまに状況説明をして、後はゆっくりと待つしかない。
待っている間も頭だけはフル回転だ。天気もさらに変わりそうなので、過去1時間分の気象データをじっくり観察する。風が少しずつ北寄りに変わり始める徴候が出てきている。多少追い風が強くなっても離陸できるように準備をしていたが、使用滑走路そのものが変わる可能性が高くなってきた。それは1分後なのか、30分後なのか、、、。外見上はのんびり構えながらも脳内では目や耳から入るさまざまな情報からさまざまな可能性を検討している。

定刻から15分過ぎた頃、出発の許可が降りた。
ようやくプッシュバックの許可。
航空機はターミナルを離れて行く。その途中、ほかの便に使用滑走路変更の指示をしている管制官の声が無線を通じて聞こえてきた。エンジンスタートが正常に続いていることを見届けながら、頭の中ではプッシュバック後の滑走路変更に必要な作業手順と一連の出発作業の流れの組み換えを始める。
プッシュバックが終わりブレーキをセットして、地上車両の切り離しを依頼。その間に最新の気象情報を確認する。風はまだ殆ど変わっていない。北風運用でも離陸時には追い風成分が残っている。離陸時のセッティングでこの先の変化傾向を加味して、判断をしなければならない。

程なく地上車両が切り離されて移動準備が完了した。

周囲を見回すとすぐ横の誘導路にも航空機が渋滞気味に移動していた。こういうときは焦らず、止まっている間に少し作業を片付けてしまおう。
とりあえず航法データをすべて変更された滑走路のものに変更していく。
すべての変更が終わって移動開始。案の定、滑走路手前にはたくさんの航空機。そして離陸している航空機はまだ南風運用の滑走路からの離陸を指示されて待っていた機体。あと数機の離陸が終わったら反対方向の北風用の滑走路からの離陸が始まるようだ。待っている間に徐々に風も北に回り始めた。

ちょうどよいタイミングで離陸できるかもしれない。

空中ではまだ南西の強風が残っているはずで、浮揚した直後に乱れる可能性もある。離陸後、速度が急減しても対応できるように速度に余裕を持たせながら上昇姿勢を作る。実際には風のピークを過ぎていたようで、それほど大きく荒れることは無かった。
私自身は普段あまり運が良い人間だと感じることがないが、不思議とフライトの時には良いタイミングに恵まれることが多い。一緒にフライトを創り上げている仲間やお客さまのおかげのように思う。

目の前で起こる現象に淡々と準備を積み重ねてやれることをやる。嫌だ嫌だと考えずに前向きに向き合うことが一番上手く乗り切るコツなのかもしれない。
上空では215ノット(およそ時速400キロ)のジェット気流。今期最も強い風を受けた。真冬の強烈なジェット気流に春の暖気。立春を前に季節は大きく動き出そうとしている。
そんな一日だった。

※旅コラムは、2018年2月6日時点の内容です。

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