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2017年10月 5日 (木)

1分でも早く到着するために。ボーイング737の得意ワザ「RNP ARアプローチ」とは?

ボーイング737-800型機副操縦士 今泉

Category:  パイロット

いつもご覧いただきありがとうございます。ボーイング737-800型機副操縦士の今泉と申します。
さて、皆さまは当社ボーイング737-800の国内線にご搭乗頂いたことはありますでしょうか?
そして着陸の間際、「こんなに山肌スレスレを飛んで大丈夫?」や、「こんなに低い高度で旋回してるけど大丈夫?」などと感じたことはありませんか?

もしかするとそれ、「RNP ARアプローチ」かもしれません。これはたくさんある着陸方法の一つで、ほとんどの場合、もっとも短い距離で着陸することができます。しかもこのRNP ARアプローチは、まだすべての航空会社、すべての飛行機でできるわけではありません。今のところJAL機ではボーイング737-800でしか行うことができない最新の方法なのです。
今回は、この少しマニアックな737の得意ワザ「RNP ARアプローチ」についてお話しをしたいと思います。

今も昔も、主流となる着陸方法は、電波の誘導を受けて飛行機を着陸させる「ILSアプローチ」という方法です。ILSは"Instrument Landing System"の 略で、そのまま日本語にすると「計器着陸装置」の意味です。新旧ほとんどすべての飛行機が対応しており、正確で安定して着陸できます。 ところがこの方法は、着陸前にある程度の距離をまっすぐ飛ばなくてはいけなかったり(電波は直線にしか飛ばないため)、電波を発する地上の設備が必要で、 コストがかかります。

出典:絵で見る航空用語集

一方でRNP ARアプローチですが、正式名称は"Required Navigation Performance - Authorization Required"という長い名前です。GPS信号などをもとに、定められたルートからはみ出ることなく正確に飛ぶことを意味します。電波の誘導は受けません。
一見、カーナビやスマホのマップアプリと同じように感じますが、精度の高さは随分違います。空の世界では、「わずかなズレ」が致命的なので、非常に正確です。
また、その「わずかなズレ」が万が一発生した場合でも、すぐに「ズレてます!」と飛行機自ら教えてくれる点もカーナビなどにはない点です。これまた簡単なようですが、そうでもないのです。目のない飛行機が、しかも時速数百キロで飛びながら自らの位置を「違う」と判断するためには、複雑なシステムが必要なのです。
「Required = 必要とされる、Navigation Performance = 航法の性能」が、上記のようにきちんと飛行機自らで監視できていることが証明されていなければならず、国から「Authorization Required = 特別許可を要する」わけです。冒頭で「航空会社や飛行機がまだ限られている」と書いたのは、この特別な許可を得るのが簡単ではないためです。

RNP ARアプローチのメリットはいくつかありますが、最も大きなものは、まっすぐしか飛ばせない電波にとらわれず、曲線も使って自由にルートを設定できることです。距離が短くなり、早く到着できるようになります。しかも、地上設備を新たに作る必要がないので、どこの空港にもお金をかけずに設定できます。今年になっていくつかの空港で新たに設定されたのですが、そういう理由からです。
では羽田ー青森便を例にとってみます。まずは昔からある電波誘導のILSアプローチの図です。羽田から飛んできた飛行機はいったん青森空港の上空を飛び越して、青森湾の上空を大きくグルリと旋回、針路を再び空港へ向け、最後の直線で電波誘導を受けて着陸します。

空港上空を飛び越し、また空港に戻るまでどのくらいの距離を飛んでいると思いますか?

その距離なんと70kmちょっと。

青森では電波誘導を受けるためにそれだけの距離を飛んでいます。時間がかかることは言うまでもなく、燃料をたくさん使うので環境にも良よくありません。
そこでRNP ARアプローチが登場します。下の図をご覧ください。

わかりにくいので、重ねると...

こうなります。
最短のルートを飛んでいることがお分かりいただけるでしょうか?これにより飛行距離が60km弱短くなりました。これは東京から湘南海岸まで行けてしまう距離です。節約できる燃料はざっとお風呂1杯分くらい。飛行機では5分以上早く到着できる計算になります。
「たった5分?」と思いますか?ところが飛行機は常に最大に近い速度で飛んでいるため、時間短縮は簡単ではないのです。とりわけ距離の短い国内線では私たちパイロットがいくら上空で工夫をしても、5分ものショートカットはほぼ不可能と言っていいかもしれません。話は逸れますが、皆さまに定刻出発にご協力いただいているのも、地上で遅れたほんの数分でさえ、上空で取り返すのが難しいためです。

このように最短経路を設定できるため、電波では不可能だった、旋回を繰り返して山肌をなでるような飛び方も可能です。わかりやすいのが熊本の例です。

標高の高い場所を避け、山間を縫うようにして飛んでいきます。客席からご覧いただいても山の近さには驚かれるかもしれません。

このように、通常よりも障害物の近くを飛んでいくため、各空港周辺の地形、障害物の位置や高さについて熟知していなければなりません。また、GPSなどの機器が正常に動いていることをパイロットが厳しくチェックしなければならず、その技量を維持するために、毎年の訓練が義務づけられています。その訓練を受けないとRNP ARアプローチを行うことはできません。
障害物の近くでエンジンが故障した場合や、飛行機のコンピューターがダウンしてしまった場合など、さまざまなケースを想定して訓練しています。どのようなトラブルが起きても対応できるよう、万全の訓練を受けています。どうぞ安心してご搭乗ください!

最近は地方空港でこのRNP ARアプローチが多く設定されています。青森の例も今年新設されたばかりです。
皆さまを安全に、そして定刻どおりに目的地までお送りするため、これからも積極的にこのアプローチを行なっていきます。737-800の国内線にご搭乗の際はぜひ楽しみにしてみてください。

※旅コラムは、2017年10月5日時点の内容です。

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